はじめよう実験計画

実験を早く終わらせるための技術

2水準の要因を含む決定的スクリーニング計画

 2水準の要因を含む決定的スクリーニング計画(DSD)の作成

はじめ、決定的スクリーニング計画(DSD)は3水準実験として考案されましたが、2水準(-1および1)要因も扱うことが出来ます。

作成はいつも通り、Rで行っていきます。

 

#計画の作成
library(daewr)#DSDのためのパッケージ
X0 <- DefScreen(m=4, c=1)

 

daewrパッケージのDefScreen関数の"c"を指定することで、2水準要因の数を指定できます。上で作成された計画X0は表1のようになります。

 

f:id:Sturgeon:20210502174122p:plain

表1. 2水準要因(E)を含む決定的スクリーニング計画X0

 

 2水準の要因を含むDSDの特徴

2水準要因を含むDSDには以下の注意点があります。

  1. 2水準要因と3水準要因は完全に独立ではない
  2. 2乗効果の推定が不確実になる

まず、特徴1についてですが、表1に示した計画X0の主効果同士の相関係数を図1に表します。確かに、2水準要因である要因Eはその他の3水準要因と若干の相関があることが分かります。ただ、相関係数は0.17なので、ほとんど独立と言って問題はないと思います。

f:id:Sturgeon:20210502174835p:plain

図1. 2水準要因(E)を含む決定的スクリーニング計画X0の主効果の相関係数

 

次に、特徴2「2乗効果の推定が不確実になる」についてですが、これも相関係数をチェックすると納得できます。計画X0の2次効果の相関係数を図2に、要因Eが3水準だった場合の相関係数を図3に示しました。

水準要因がある場合2乗効果の相関は0.3であり、2水準要因がない場合(0.08)と比較して、やや高くなっていますね。

f:id:Sturgeon:20210502180500p:plain

図2 2水準要因(E)を含むDSDの2次効果の相関係数。2乗効果同士の相関係数は0.08

 

 

 2水準の要因を含むDSDの解析

解析方法についてはこちらの記事と同様にできます。例えば、AICcによるモデル選択については、2水準要因の有無にかかわらず適用できます。

sturgeon.hatenablog.com

 

一方、上の記事で説明した、効果的モデル選択におけるStep1「有効な主効果の選別」では、はじめにfake factorによる誤差の推定を行う必要がありました。2水準要因を含むDSDでは同じことができないので、以下の方法で誤差を推定します。

f:id:Sturgeon:20210502181553p:plain

表2. 誤差推定のための追加実験(run 13と14の繰返し)

やっていることは単純で、DSDのセンターランに相当する最後の2行を反復することです(run13の反復をrun131, run14の反復をrun141で表しています)。

こうして、実験結果Yi (iはrun番号)が得られた後、Y13, Y14, Y131, Y141を用いて、

 

 \displaystyle{ \hat{\sigma}^2=V(-(Y_{13}-\bar{E}), (Y_{14}-\bar{E}), -(Y_{131}-\bar{E}), -(Y_{141}-\bar{E})) } 

により、誤差σを計算することが出来ます。ここで \hat{E}はY13, Y14, Y131, Y141であり、例えば (Y_{13}-\bar{E})は2水準要因であるEの効果を差し引いた実験結果となります。V(x1, x2)はx1とx2の分散を計算するという意味です。

σを求めた後は、先の記事を参考にしていただいて、有効な主効果を選別し、Step2で2次効果を追加することで、モデル作成ができます。

 

参考文献

Definitive Screening Designs with Added Two-Level Categorical Factors, Jones & Nachtsheim, 2017.