はじめよう実験計画

実験を早く終わらせるための技術

Rを使った実験計画おける予測の誤差分布グラフ(VDG)の作図

はじめに

本記事では、Rを使用したVDGの作成方法についてまとめてみました。VDGについては以前紹介しましたので、こちらの記事をご覧ください。

sturgeon.hatenablog.com

中心点数の異なる二つの中心複合計画の比較

VDGは要因の数が3つ以上あるとき、予測分散のプロットを視覚的に表すために利用するものです。本記事では、3要因の中心複合計画について、中心点の数n0が1個または4個の場合の2つの計画を、VDGを用いて比較したいと思います。

まず、Rの"rsm"というパッケージの関数"ccd"を使って2つの中心複合計画を作成します。

library(rsm)
design1 <- ccd(3, n0=c(0,1), randomize = F, oneblock = T, alpha=1.73)
design2 <- ccd(3, n0=c(0,4), randomize = F, oneblock = T, alpha = 1.73)

作成される2つの計画design1とdesign2は表1の通りです。

f:id:Sturgeon:20200515160713p:plain

表1. 中心点数1の中心複合計画(design1)と中心点数4の中心複合計画(design2)

次に、これらの計画をVDGを用いて比較します。今回はVDGの一種であるUnscaled Predictoin Variance (UPV)プロットとFraction of Design Space (FDS)プロットを作成したいと思います。VDGプロットはRの"vdg"というパッケージを使うと簡単に作成できます。

library(vdg)
quad3 <- formula( ~ (x1 + x2 + x3)^2 + I(x1^2) + I(x2^2) + I(x3^2))
UPV <- spv(1000, design=list(design1,design2), formula=quad3, unscaled=T)
plot(UPV, which=3)#UPVプロット
plot(UPV, which=1)#FDSプロット

上記コードではquad3に3要因の2次の項までを含めたモデルを設定しています。最後2行がUPVプロットとFDSプロットで、spv関数のwhich=3と1でプロットの種類を指定する必要があります。

まず、UPVプロットを図1に示します。ここでは、ピンクと水色の実線のみに注目してください。実線がdesign1とdesign2のUPVを表しています。横軸は中心点からの距離ですから、design1のUPVは中心点近くで大きく、それから一度減少しますが、中心点から離れた領域で再度上昇していくことが分かります。一方、中心点数を増やしたdesign2では、中心点付近のUPVがdesign1と比べてかなり小さく抑えられていることが分かりますね。

f:id:Sturgeon:20200515161913p:plain

図1. UPVプロット

次に、図2にFDSプロットを示します。design1について、横軸が0.5のところを見ると、縦軸は約0.7です。これは実験空間の50%のUPVが0.7以下であることを意味します。したがって、FDSプロットの曲線ができるだけ下の状態であることが望ましいです。design1とdesign2を比較すると、design2の方が全体的に下にありますから、UPVが小さく、予測分散の小さな優れた計画であると考えることが出来ます。

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図2. FDSプロット

まとめ

以上、Rを使ったVDGの作成の例として、UPVプロットとFDSプロットの作成方法をまとめました。また、中心点数の異なる2つの中心複合計画を比較しました。要因の数が2つであれば、予測分散プロファイルは3Dグラフやコンタ―図を用いて表すことが出来ますが、3要因以上のときに、どのように計画の予測分散を評価・比較すればよいか分かりました。