概要
本記事から第3回に渡ってPlackett-burmann計画(プラケットバーマン計画)を利用したペーパーヘリコプターの落下時間の最適化実験を行います。ペーパーヘリコプターの翼の長さやボディーの幅などを含めた9つの要因を、どのように最適化すれば、落下時間が向上するか、という内容になります。
Plackett-burmann計画についてはこちらをご覧ください。
要因が9つと多いので、本実験では、まずはじめに今回やることは、1)Plackett-burmann計画によって重要な要因をピックアップし、2)D最適計画によって計画を拡張する、という2段構えで、最小の実験回数で最適化を目指します。
本記事では1)のPlackett-burmann計画に焦点を当てました。
ペーパーヘリコプターの落下時間に影響を及ぼす因子
ペーパーヘリコプターは下の動画のようなのものです。紙とはさみがあれば簡単に作れます。高い所から手を離すと、翼が回転しながら落下していきます。
本実験では以下の9つのパラメータを要因として考慮し、ペーパーヘリコプターの落下時間を最適化することにしました。
- B :ボディー長
- Bw :ボディー幅
- F :ウィングレット長(翼端の折れ曲がり)
- G :翼の間隔
- L :おもり位置
- R :翼長
- T :テール長
- Tw :テール幅
- W :おもり(ホチキス)の数
事前にいくつかのペーパーヘリコプターを作製して、妥当な範囲のパラメータを決定しました。それぞれの要因の水準値としては、表1の値の範囲で調査することにしました。
Level | B | Bw | F | G | L | R | T | Tw | W(個) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
-1 | 2 | 3 | 0.5 | 0 | 1 | 6 | 8 | 1 | 2 |
0 | 3 | 3.5 | 1 | 0.5 | 2 | 7 | 9 | 1.25 | 3 |
1 | 4 | 4 | 1.5 | 1 | 3 | 8 | 10 | 1.5 | 4 |
Plackett-Burman計画
Plackett-Burman(PB)計画は12回で最大11の要因の主効果を推定できる計画です。
Rでは次のように作成します。
library(FrF2) #12試行11要因のPlackett-Burmann計画 pb(nruns = 12) #実行結果 A B C D E F G H J K L 1 1 -1 1 1 -1 1 1 1 -1 -1 -1 2 -1 1 1 1 -1 -1 -1 1 -1 1 1 3 -1 -1 -1 -1 -1 -1 -1 -1 -1 -1 -1 4 1 1 1 -1 -1 -1 1 -1 1 1 -1 5 -1 -1 1 -1 1 1 -1 1 1 1 -1 6 -1 1 1 -1 1 1 1 -1 -1 -1 1 7 -1 1 -1 1 1 -1 1 1 1 -1 -1 8 1 1 -1 1 1 1 -1 -1 -1 1 -1 9 1 -1 1 1 1 -1 -1 -1 1 -1 1 10 1 -1 -1 -1 1 -1 1 1 -1 1 1 11 1 1 -1 -1 -1 1 -1 1 1 -1 1 12 -1 -1 -1 1 -1 1 1 -1 1 1 1 class=design, type= pb
B | Bw | F | G | L | R | T | Tw | W |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | -1 | 1 | -1 | -1 | -1 | 1 | 1 |
-1 | 1 | 1 | -1 | 1 | -1 | -1 | -1 | 1 |
1 | -1 | 1 | 1 | -1 | 1 | -1 | -1 | -1 |
-1 | -1 | 1 | 1 | 1 | -1 | 1 | 1 | -1 |
1 | -1 | -1 | -1 | 1 | 1 | 1 | -1 | 1 |
-1 | 1 | -1 | -1 | -1 | 1 | 1 | 1 | -1 |
1 | -1 | 1 | -1 | -1 | -1 | 1 | 1 | 1 |
1 | 1 | -1 | 1 | 1 | -1 | 1 | -1 | -1 |
1 | 1 | 1 | -1 | 1 | 1 | -1 | 1 | -1 |
-1 | 1 | 1 | 1 | -1 | 1 | 1 | -1 | 1 |
-1 | -1 | -1 | 1 | 1 | 1 | -1 | 1 | 1 |
-1 | -1 | -1 | -1 | -1 | -1 | -1 | -1 | -1 |
過飽和計画
最後の過飽和計画とは(要因数≥試行回数)を満たす計画のことです。
過飽和計画はPB計画の半分を使って作成できます。9要因6回の過飽和計画を作成するには、10要因12回のPB計画のある1列を「指標列(indicator)」とし、指標列が1または-1になる列を選びます。具体的に説明すると、図2のように、右端の列を指標列"Indicator"とします。そして、"Indicator"が-1(または1)となるすべての列が過飽和計画になります。指標列は計画には含めません。
表3は図2のやり方で作成した9要因6回の過飽和計画です(図2の赤色部分と同じ)。
B | Bw | F | G | L | R | T | Tw | W |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | -1 | 1 | -1 | -1 | -1 | 1 | 1 |
-1 | 1 | 1 | -1 | 1 | -1 | -1 | -1 | 1 |
1 | -1 | 1 | 1 | -1 | 1 | -1 | -1 | -1 |
-1 | -1 | 1 | 1 | 1 | -1 | 1 | 1 | -1 |
1 | -1 | -1 | -1 | 1 | 1 | 1 | -1 | 1 |
-1 | 1 | -1 | -1 | -1 | 1 | 1 | 1 | -1 |
過飽和計画は、うまくいけば6回の試行で9要因を調査できるため、驚異的です。しかし、残念ながら主効果どうしが独立ではありません。表4は主効果の相関を表していて、すべての主効果は他の主効果と約0.3の相関があることがわかります。そのため、過飽和計画では有意な要因が抽出できない恐れがあります。
そこで、今回はひとまずは過飽和計画(表3)を試してみて、有意な効果が明らかになれば儲けもの、明らかでなければ12回のPB計画の半分(図3の下半分)を行う、という方針にしました。
以上から、最終的なスクリーニング計画を図3のように計画しました。RunOrder 5の行はすべての要因の水準を0とした条件で、加えても加えなくても良いのですが、計画のバランスには影響がないため、実験に加えました。
繰返しになりますが、まず図3の過飽和計画を行い、有意な要因が明らかでなければさらに6回の実験を行う、という流れになります。
まとめ
本実験では、ペーパーヘリコプターの落下時間の最適化にあたり、スクリーニング計画+拡張計画の2段の最適化を行います。1段目のスクリーニング計画として一部実施要因計画、Plackett-Burman(PB)計画、過飽和計画を検討しました。その結果、はじめに6+1回の過飽和計画を実施し、有意な要因の抽出に曖昧さが残れば、続けて6回の実験(全体として12回のPB計画+1)を行う方針としました(図3)。
次回「その2」で、スクリーニングの実験結果を報告します!