- はじめに
- 4成分系配合計画における実験点の正四面体表示
- 正四面体表示の仕組み
- ある1成分(x2)だけ0で、残りの3成分が1/3ずつ
- 4成分すべての割合が等しい
- 正四面体のある面上の点
- 正四面体内部の点
- 4成分以上では?
- さいごに
はじめに
配合計画は、例えば接着剤の成分の配合や、粉末の配合などを調査する場合に有効な実験計画です。配合計画については、簡単にまとめていますので、まずはこちらの記事をご覧ください。
上の記事にも当てはまりますが、配合計画の説明は3成分の計画であることがほとんどです。なぜなら、3成分なら三角形の図で実験点(配合)を表すことが出来るからです。
しかし、現実には4成分、またはそれ以上の成分数を扱う計画もしたいですよね。そうなると、実験点を2次元のグラフに表すことが出来なくなり、一気にややこしくなります。
そこで、本記事では4成分系の配合計画における実験点の表し方について、まとめてみました。
4成分系配合計画における実験点の正四面体表示
3成分系の配合計画では正三角形を用いたので、4成分系ではそれを正四面体に拡張することで実験点を視覚的に表現することが出来ます。
まずは図1をご覧ください。
図1の正四面体におけるある1点が、配合計画における実験点の1つを示しています。例えば、正四面体の各頂点は成分x1, x2, x3, x4のいずれか1つの割合が100%で、その他の成分が0%である配合を示します。また、正四面体の各辺の中点は4成分中のある2成分の割合が50%ずつで残りの2成分が0%である点です。ここまでは何となく理解できるのではないでしょうか?
しかし、図1にはx2のみ0で残りの3成分が等割合だけある実験点(図1中■)、正四面体の重心(図1中×)、正四面体のある面上にある点Pが描かれています。これらの点(配合)が、なぜその場所にあるのか?その疑問に答えるには、正四面体表示の仕組みを理解する必要があります。それについて、以下で説明します。
正四面体表示の仕組み
正四面体表示は次のポイントだけ抑えれば大丈夫です。
- 頂点xに向かい合う面Sがx=0の面
- 実験点を通り面Sに平行な面が、正四面体と交わる点が成分xの配合を表す。
以下では、これらのポイントを考慮して、ある配合が正四面体中のどの点に相当するか確認していきます。
ある1成分(x2)だけ0で、残りの3成分が1/3ずつ
まず、(x1, x2, x3, x4)=(1/3, 0, 1/3, 1/3)の配合が、正四面体のどの点に相当するか確認したいと思います。この点は図1を見れば既にプロットされていますね。答えは正四面体の面x1x3x4上の点■です。ポイント1より、x2に向かい合う面x1x3x4がx2=0を表しています。この面だけ取り出したのが下の図2です。
図2はx1, x3, x4の3成分系配合計画における正三角形表示と全く同じです(正三角形表示についてはこちら)。したがって、図1中■の点で配合(1/3, 0, 1/3, 1/3)が表されることが分かります。
4成分すべての割合が等しい
次に、4成分すべての割合が等しい点(x1, x2, x3, x4)=(1/4, 1/4, 1/4, 1/4)を探します。これは何となく予想がつくと思いますが、正四面体の重心×になります。
正四面体の重心でなぜすべての成分の割合が1/4であることを表現できるかをチェックしましょう。
図3は図1の正四面体の点(1,0,0,0), (0,1,0,0), (0,0,1/2,1/2)を通る面を取り出したものです。重心×は記号Gで示しました。
人生で初めてメネラウスの定理を使いましたが(笑)、メネラウスの定理を使うと、重心Gが、頂点A(x1)から底面に下した垂線AHの1/4の高さに位置することが分かります。図3の右図からもわかるように、Gを通り底面に平行な面(斜線部)はx1=1/4の面に相当します(ポイント2より)。これは底面がx1=0で、頂点がx1=1であることから分かると思います。
その他の成分x2, x3, x4についても同様なため、Gは(x1, x2, x3, x4)=(1/4, 1/4, 1/4, 1/4)を表していることが分かります。
正四面体のある面上の点
さて、正四面体のある面は、それと向かい成分が0である面です(ポイント1)。したがって、前述のように、その面は3成分系配合計画における正三角形表示と考えることが出来ます。
しかし、ここではポイント2によって正四面体のある面上の点Pの配合を求めたいと思います。図1を再掲します。
図1中の点Pの配合を求めます。
まず、成分x1に関して、Pを通りx1=0の面x2x3x4に平行な面を描きます。するとポイント2より、x1=2/3であることが分かりました(図4)。
次に、成分x2に関して、Pを通りx2=0の面x1x3x4に平行な面を描きます。すると、x2=1/6であることが分かりますね(図5)。
そして、成分x3に関して、Pを通りx3=0の面x1x2x4に平行な面を描きます。すると、x3=1/6であることが分かります(図6)。
なお、点Pは頂点x4に向かい合う面上にあるので、成分x4の配合は0です(ポイント1)。
以上より、点Pの配合は(x1, x2, x3, x4)=(2/3, 1/6, 1/6, 0)でした。
正四面体内部の点
最後に、正四面体内部の点の配合ついて考えます。正四面体内部の点は、4成分全てが0でない割合を持つことを意味します。ここではx1, x2, x3, x4)=(2/5, 2/5, 1/10, 1/10)が正四面体内部のどこに位置するのか調べていきましょう。
おすすめのやり方は、まず一つの成分(ここではx1)について、割合一定の面を描きます。その面を取り出すこと、残りの3成分に関する三角形表示となるので、そこから特定の配合を示す点を見つけるというものです。
図6にx1=2/5の面を取り出し、x2=2/5, x3=1/10, x4=1/10の点を☆で示しました。
この図6の三角形の一辺の長さは1ではなく、3/5(=1-x1)になっていることに注意が必要ですが、x2, x3, x4の配合は各辺でそのまま長さとして考えて大丈夫です。というのも、例えば、三角形上のx2=2/5は正四面体の底面に平行移動され、2/5の位置に相当するため、三角形表示における3成分の配合(長さ)は、正四面体表示でもそのまま同じ配合(長さ)になります。
言葉で説明するとややこしいですが、つまりは、ある成分xに関してx一定の面を取り出し、その面で通常の三角形表示を行えばOKです。
4成分以上では?
4成分以上の配合計画になると、もう3次元的には表すことが出来ないので、別の工夫が必要になります。
たとえば5成分系なら、第5の成分x5を一列に並べた正四面体の辺の大きさで表すということが考えられます。そうすると下の図6のように実験点を表すことが出来ます。
5成分より大きくなったら、今度は正四面体を2次元的に、あるいは3次元的に配列したり、色の違いなどを利用して実験点を視覚的に表示することもできるでしょう。ただし、成分があまりにも多いと、視覚的な表示はかえって分かりにくいかもしれませんね…
さいごに
4成分系の配合計画を実際にやろうと思ったとき、実験点の視覚的な表示が難しいという問題があります。本記事では正四面体表示を使った配合計画における実験点の視覚的な表示についてまとめてみました。